武の探偵事務所、そしてミルクホール新世界。どちらも「矢来銀座」というアーケード街に店を構えている。そして武達が向かっている「ホテル業魔殿」も同じ矢来銀座の一角に建てられていた。店名通りホテル業を営んでいる店なのだが、むろんここも「裏」の商いを行っている施設。いや、「商い」と呼ぶべきかは微妙だが、ここを訪れる多くの客は宿泊を目当てにはしていなかった。
 きしむ扉を開けると、表の古びたビルからは想像できないほど豪勢な装飾が来客である武達を出迎えた。
「……業魔殿にようこそ。失礼ですがどちら様ですか?」
 中世の宮殿を思わせる装飾に見合った一人のメイドがもてなしの言葉を発する。だが言葉とは裏腹に人を出迎えるような笑みはない。笑みどころか、表情がないというべきか……人にしては青白すぎる肌や真っ赤な瞳も相まって、無表情である事がより不気味さを醸し出しているようにも感じられる。しかし良く見ればそのメイドは非情に整った顔をしており、無表情なのがかえって彼女を美人に見せているようにも感じられる。ショートカットの髪型も無表情なメイドを愛らしく見せる助力しているかのようだ。
「えっと、予約していた金清ですけど……」
 予約したと口にしているが、武はこのホテルの部屋を予約した覚えはないし泊まるつもりもない。ただまず先にこう伝えるようにと「知っていた」だけの話だ。当然その知識は百合子が武に教え込んだもの。既に彼女が手回ししているということも知っている武は、躊躇わずメイドに話を切り出していた。
「金清様ですね、お待ちしておりました。こちらへどうぞ」
 丁寧な口調ながら、何処か機械的な返答のメイド。素直にメイドの案内に従いながら武達は店内を進んでいく。
「少々お待ちを」
 緩やかに曲がりながら二階へと続く大階段。その手前でメイドが振り向き武達を制止させた。そして階段脇の壁にメイドがそっと手を触れると、大きな音を立て、上り階段が一段ずつ落ちていく。そして……目を丸く見開き驚く武の前に、下り階段が出来上がっていた。
「どうぞ」
 平然と案内するメイドに、まだ心臓の鼓動を早めながらもついていく武。その後ろをベスや由美、パスカルが続いていく。ピクシーははしゃぎながら武達の周囲を飛び回っていた。
 地下へ向かう階段は長く、しばらくは足音とはしゃぐピクシーの羽音としゃべり声が辺りに木霊していた。らせん状の階段を何周しただろうか……どれほど下ったのかもイメージし辛くなるほど降りたところで、ようやく視界が開けた。
 どう形容すべきか……武達の眼前に広がる光景は、いささか説明しづらい物ばかりで埋め尽くされていた。薄暗いが広い室内には用途の想像すらしにくい機械類が並べられているが、近未来的な光景とは言い難い。どこか中世時代を思わせる雰囲気はあるが、機械を見る限り確実に近代の光景だ。実験室という言葉が似合いそうではあるが、科学的というよりは魔法的な何か……一般的なボキャブラリーでこの光景を表現することはとても困難だ。
 そして何より、説明しづらいこの光景にとけ込んでいるのか浮いているのか、赤いマントに黒い船長服という出で立ちの老人も一言では形容しがたい容姿をしていた。
「業魔殿にヨーソロ、若き悪魔使いよ」
 顎髭を蓄えた老人が武達を歓迎した。前髪で片眼がふさがっているが、見えるもう片方の目がジッと武を見据えている。
「……ヨーソロ?」
 聞き慣れない単語に、武は思わずオウム返しに言葉を発してしまう。
「宜候(ようそろ)……よろしくそうろう、という意味だ若者よ。船乗りの言葉では「前進」を意味している。悪魔使いとしての船出を飾るには相応しい言葉だと思うが、いかがか?」
 仰々しい物言いだが、実際は船乗りの格好をしているから「ようこそ」と「ヨーソロ」をひっかけているだけかも……と思った武だったが、それを口に出してしまうような礼儀知らずではない。
「ヨーソロ? ようこそ? ああ、そういうギャグ? アハハハ! おもしろーい!」
 武は大人でも、彼の小さな仲魔はまだまだ子供だった。
「……さて若者よ。そなたがここを訪れることは百合子女史より聞いておる」
 笑いながら飛び回っているピクシーを気にとめず、船乗り姿の男はゆっくりと武に歩み寄る。
「我が名はヴィクトル。人と悪魔の神秘につして、研究という大海原を航海し続ける探求者」
 見た目の格好やガッシリした体格からは、研究者より船乗りの方が似合っている。数多の「年期」を感じさせる顔つきやしわ、何より威厳に満ちた「気」が、船乗りというよりも海賊とすら思わせる。だが、彼は紛れもなく研究者。人や悪魔の神秘を見続け、そして悪魔達と長年渡り歩いてきたその過程が、彼を人として研究者として鍛えてきたにすぎない。
 武はその場から一歩二歩と退きたくなる気持ちをグッと堪えている。武も武なりに様々な人間と出会ってきたが、今ゆっくりと近づく老人ほどの人間に出会ったことはなかった。怖いわけではないのだが、気圧されてしまう。理屈ではない迫力……じっとりと手や額に汗を掻いていることに、武本人はまだ気付けていない。
「まあ、そなた達からすれば……悪魔合体を生業とする者。理解すべきはそれだけで良いな」
 悪魔合体……武がこの老人に気圧されている理由は、事前にその事を知っていたからかもしれない。
 悪魔同士を融合させ、上位の悪魔を召喚する邪法。それが悪魔合体。武はこの悪魔合体という邪法が……どうしても「理解」できなかった。
 理屈ではない。生理的嫌悪にも似た、拒絶を感じてしまうのだ。命ある者を用いて融合だの召喚だの……それを平然と行うこと自体、武は「理解」出来ないでいる。だからこそ、武はここを訪れる事にどうしても乗り気になれなかったが……訪れなければ先に進めないのならばと重い腰をここまでどうにか運んできたのだ。
「……ふむ、どうやらそなたは我が輩をあまり良く思っていないようだな」
 平常心を保とうとしていた武だが、自分の人生を軽く三倍以上は生きているだろう人生の先輩に、アッサリと内心を見破られてしまう。しかし自分に嫌悪感を抱く青年を見つめながら、老人は口元をつり上げた。
「いや、それで良い……先に述べたように、我が輩の研究は邪法。そう易々と受け入れられるものではない」
 多くの悪魔使いと出会ってきたヴィクトルは、長い年月の中で武のような反応を示す者を何人も見てきた。彼にとってみれば、武の心中を察することは元素記号を一つ覚えるよりも簡単なことだ。
「それでも、そなたには我が輩の力が必要になるだろう……悪魔合体については、仲魔と共にゆっくりと答えを出すがいい……そなたは若い、急ぐ必要はないはずだ」
 老人はきびすを返し、一度武の元を離れる。そして機材の上に置かれていたネットブックPCと日本刀を手に取り再び武へと歩み寄った。
「持って行くがよい。これが百合子女史より渡すよう頼まれた、「CUMP(コンプ)」と「練気刀(れんきとう)」だ」
 ヴィクトルが差し出すパソコンと刀に、武が手を伸ばす。
「なっ!」
 かろうじて触れるか触れないか……武が伸ばした指の先で、ゆらりと青白い炎のような揺らめきが立つ。驚いた武が短い悲鳴を上げながら伸ばした手を素早く引っ込めてしまう。
「恐れることはない。今そなたが見た物は……そうさな、有り体に「妖気」とでも言えば判りやすいか?」
「妖気?」
 聞いただけで髪の毛が逆立ちししそうな単語を、武も繰り返す。
「さよう……こちらの刀は俗に言う「妖刀」でな。刀そのものに悪魔の力が宿っておる」
 ある意味ヒロイックファンタジーには必須とも言える、力のこもった武器。創作の世界でしかお目にかかれない代物を実際目の当たりにして、武は再び手を伸ばすのを躊躇っている。だがこれを受け取るためにここへ来た……周囲にも判るほど大きな動作でゴクリと唾を飲み込み、意を決して再び手を伸ばす。
 刀は熱くもなく、さりとて冷たくもない。だが刀の柄を握った武は背筋に悪寒を走らせた。しかしそれは一瞬。悪寒も無くなり、そして妖気も見えなくなっていた。
「……青年、よく覚えておくことだ」
 刀に続きパソコンも手に取った武に、ヴィクトルが重々しく語る。
「その刀もCUMPも、常人が安易に使える代物ではない。本来ならば幾年と修練を積み重ねた末に手に取れる業物だということをな」
 今でこそ何ともないが、あの悪寒、あの妖気……言葉の重みを武は既に実感していた。そして同時に、こんな物を手にして良いのか、自分にその資格があるのか……迷いが生じる。格好良い主人公が劇中で振るうような武器を、さして格好良くもない、何の取り柄もない自分が手にして良いはずがない。だがもう手にしてしまった……武の手中には常人が手にすべきでない武器と道具がある。創作の主人公のように運命を切り開くことが出来るのか、それとも力に溺れた「その他大勢」のようにアッサリと朽ち果てることになるのか……もう、武の命運は手中に握られていた。

「なるほど……思ったよりも簡単だな。ヴィクトルの「最新作」ってだけはあるのかな」
 確認のため、武は今一度ネットブックPCに酷似したCOMPを操作する。小さなモニタには綺麗な魔法陣が描かれ、見たこともない文字列が並び始める。そして一瞬画面がフラッシュしたかと思うと、宙に一振りの刀が浮かび現れた。
「道具の召喚まで出来るのか……本当に便利だな」
 COMPは悪魔召喚のために用いる道具だが、その他にもサマナーを手助けするプログラムが組み込まれている。制作者によって機能はまちまちだが、主に悪魔との会話を円滑に行うための通訳や交渉の補助機能、周囲の地図表示、悪魔のデータベースなどがある。武が手に入れたネットブックPC型のCOMPはヴィクトルの最新型らしく、一部の道具をデータ化し出し入れ自由に出来る機能が備わっていた。この機能を用いれば、持ち歩くだけで警察官に補導されかねない刀を自在に持ち運べるようになる。
「猫型ロボットのポケットみたいだな……アレと違って何でもかんでもって訳にはいかないみたいだけど」
 出し入れできる道具には制限があり、基本的に「魔力のこもった物」限定。つまり常人には必要ないがサマナーなどの悪魔使いには必要な道具に限られる。ヴィクトルの説明では、そもそもこの機能は悪魔召喚同様魔法陣などの効力を活用しているシステムだから、魔力のない物ではシステムの応用が利かないとのこと。武にしてみたら悪魔召喚そのものが常識を逸脱した呪術であり、その応用がどうとかプログラム的にどうとか、理解できるはずもない。出来ることは機能としてあるものを利用するだけ。
「……使う機能はこんなもんかなぁ。確かにコレ便利だけど、本来の目的である悪魔召喚とかは使うこと無いだろうし……」
 COMPはそもそも、デビルサマナーになる者が手にする道具だ。つまりコレを手にした武は……本人の意志や自覚は別として……デビルサマナーになったことになる。サマナーが主にCOMPで活用するのは悪魔召喚。サマナー(召喚師)なのだから当然なのだが、武に使用の意志はなかった。
 悪魔合体もそうだが、武はどうしても「悪魔をCOMPに閉じこめる」という発想に生理的嫌悪を感じてしまっている。命ある者を狭いところへ無理矢理押し込め、呼び出したいときにだけ呼び出し用がなければ収納する……それはまるで、先ほど呼び出した刀同様……道具扱いではないか。悪魔という異種族をどう受け入れるのか、人によって考え方はまちまちなのだろうが、武からしてみれば悪魔だって意志も命もある者。道具扱いすべき対象ではないと考えている。だからこそ、仲魔であるピクシーやベスを、こんな小さなネットブックに閉じこめる気にはなれなかった。
「あまり難しく考え方がよろしいのでは?」
 所長席で眉間にしわを寄せながらCOMPを睨み続けている武に、ベスが言葉をかけながら近づき、そっとコーヒーを机の上に乗せた。
「召喚も合体も、武様が思うようになされば良い事……必要あらば、私達はいつでも武様のために召喚に応じ、武様のためにこの命差し上げ合体に応じます。私達悪魔は定命の人間とは違い、根本的な考え方が違うのですから、武様がそこまで気を遣う必要はないんです」
 微笑むベスの言葉は彼女が武に従順しているからこそなのだが、悪魔と人間では根本的な思想が違うというのはベスに限った話ではない。
 種族などにもよるが、基本的に悪魔は餓えたり傷ついたりして命を落とすことはあっても、人間のような寿命がない。故に「命」や「時間」に対する根本的な考え方がかなり異なっている。COMPの中に閉じこめられても死ぬわけではないし、むしろサマナーが必要な時……つまり自分が活躍できるときだけ動けるということは「暇な時間を省略できる」と考える悪魔も多い。むろん便利に使われるだけというのは悪魔によって腹立たしく感じることもあるだろうが、主に忠誠を誓った悪魔ならばそこを割り切って考える者の方が多い。
 悪魔合体については悪魔によって色々と考え方が異なるようだが、ベスのように主のためにつくすことを良しとする悪魔ならば、主のために自身の命が役立つ事に喜びを感じ合体を清く受け入れるだろう。力を求める悪魔ならば、自信の意識が消え失せてでも強くなりたいと願い合体を望む。つまり自己の意識や命がどうなるかよりも、合体の結果に価値を見出すのが悪魔の思考。
 他にも「力」というものへの考え方や主従関係のあり方、個人としての自分のとらえ方など、人間とは異なるものが多い。それらは百合子から授けられた知識やヴィクトルからの説明で判ってはいる武だが、しかし人間である武が悪魔の考え方を理解しきれるかというと難しい。どうしても抵抗感がぬぐえないのはその為だ。
「俺はさ……お前達がお前達であることが良いんだよ。合体で別の誰かになったら……別人じゃないか。それはなんか耐えられないな」
 仲魔という契約。仲魔という存在。武にしてみれば、仲魔は便利に使用するための悪魔ではない。自分のために、自分の都合のためだけに合体などして個人を消し去るのは許されない行為だ……どんなに悪魔の考え方を知り得ても、武は自分の考えを曲げる気にはなれなかった。
「お優しいのですね、武様は……」
 武が特別優しいわけではなく、命を扱うという行為そのものに対する怯えなども含まれているのだろうが……無慈悲でいるよりは良い。少なくとも武はそう考えている。
「ですが悪魔召喚くらいは気軽になさって下さいませんと……私達がこうして現世にいるだけでマグネタイトを消費し続けますから、マグネタイトの補充が大変になりますわよ?」
 悪魔をCOMPに納めるのは、マグネタイトの節約という意味もある。サマナーにしても悪魔にしても、マグネタイトの保持が悪魔召喚の要であり、永遠の課題とも言える。出来る限り消費を減らしたいと思うのはサマナーなら当然のこと。
「それとも……武様は私達にマグネタイトの補充を常日頃からたっぷりして下さるのかしら?」
 淑女の顔が淫らに歪む。武の答えを予測しながら。
「……君らがずっと側にいてくれるなら」
 今はまだ二人しかいない仲魔。これ以上増えるならマグネタイトの補充も色々考えなければならないはずだが……今そんなことを気にする必要もない。武は椅子に座ったままベスを手招いた。
「フフッ、嬉しいですわ武様……失礼いたします……ん、チュ、クチュ……」
 招かれたベスは武の側へ寄り膝を曲げ、椅子ごと武に抱きついた。そしてそのまま唇を重ね、舌を絡め、唾液を混ぜ合わせ始める。
「チュ、ん、フフッ、これ、私のファーストキス、ん、チュ、武様、素敵です、チュパ、ん、クチュ……」
 淫魔だとしても、当然「初めて」はある。生まれたてのベスは淫魔としての本能であらゆる淫技を習得しているが、現世に生を受けてからまだ二日しか経過していない彼女にとって全ての行為が初体験となる。それを意識しているのかしていないのか、二人は濃厚に、激しく唇を押しつけ顔を動かし相手の髪をかき乱しながらチュパチュパと音を立て続けている。
「あー、ズルイぃ! 私も混ぜろー!」
 二人で勝手に盛り上がり始めているのを目の当たりにしたピクシーが、慌てて二人の元へと飛んできた。
「キスキスぅ! 私にもキスしてよタケルぅ!」
 せがむピクシーのためにベスは一度唇を離し小さな妖精に譲る。だがベスはその場を離れようとせず、そのまましゃがみ込んだ。
「タケルぅ、キスぅ! ん、ヒャッ! むー、もっとゆっくりー」
 そもそも体格差がありすぎるピクシーと唇を合わせるのは困難。キスと言うよりは舌でピクシーの上半身を舐めるような形になる。それでもピクシーは悦んで武に舐められていた。
 その一方で、ベスは武のベルトに手を掛けていた。ベスが何をしたいのかを理解した武は少し腰を浮かし、ベスにされるがまま下半身を露出させる。
「まあ、武様ったらもうこんなに……」
 いきり起つ陰茎をウットリと見つめながら頬を赤らめ深く息を吐き出すベス。淑女とも処女とも言い難いその反応はまさしく淫魔らしいが、愛おしく見つめるその瞳に淫欲以外の色も濃く映し出されているのは淫魔らしからぬ反応。輝くその瞳は、恋する少女のそれにも見受けられた。
「ご奉仕させていただきます……ん、クチュ、チュパ、チュパ……」
 唇に続いて鈴口へのファーストキス。武が昏睡状態の時に身体を拭きながら思わず見つめてしまっていた主の陰茎。ずっとこの時まで我慢していた淫魔はそのお預けから解放され、まるで犬のように激しくむしゃぶりついていた。
「おいひ、こん、こんなにおいひいものらったらんれ……ん、チュ、武様……美味しゅうございます、ん、チュパ、ベロ、チュ……」
 武の唇も舌も唾液も、ベスには全てが御馳走だったが、陰茎もまた彼女に舌鼓を打たせていた。まだ男を知らない淫魔は武以外の「味」など何も知らないが、しかしこれ以上の御馳走は他にないと妙な確信を得ていた。もとより武に依存気味だったベスだが、この味を知ってしまったらもう離れられないと、主への忠誠と愛情をよりいっそう深めていた。
「いいなぁ、私も舐めたいぃ」
 美味しそうにしゃぶるベスの顔を見て、ピクシーが今度は陰茎を強請った。
「我が儘ばかりだなお前は」
 自分の唾液でベトベトになっているピクシーに、武は苦笑した。
「だってぇ……私もペロペロしたいの。タケルのオチンチンペロペロしたいぃ!」
 ある意味我が儘は妖精の特権か。可愛らしく強請られては武もベスも言うことを聞いてあげたくなってしまう。
「もう少し待ってくださいね……」
 ベスは一度武の陰茎から唇を離すと、手早く上着を脱ぎ下着姿になる。色こそ白く純情そうだが、胸元のカットは際どくショーツもローライズで際どくセクシー。そんな下着姿だけでも情欲的だがベスは上着に続いてブラも手早くはぎ取るように脱ぎ捨てる。
「ほら、こうすれば二人で武様の物をご奉仕できますから」
 ベスは露出した胸の谷間に武の陰茎を挟み込んだ。巨乳と言うほどではないベスの胸では武の膨張した陰茎を全て包み込めないが、それがかえってピクシーに抱きつかせる隙間を作り出し、二人がかりでの奉仕を可能にしていた。
「やったぁ! ん、タケルぅ、すっごい熱くなってるね……ん、ベロ、ん、ん、ふぁ! い、すごく、熱くて、ん、ビクビク、してる、ん、あ、あっ!」
「ん、どうですか? 武様……私と、ピクシーのご奉仕は……」
「ああ、すごいよこれ……」
 ベスの胸が竿を、ピクシーの胸がカリを刺激する。そしてベスの手により竿への圧力が調整され、ピクシーの指によって鈴口が直接刺激される。通常ではあり得ない奉仕プレイに、武はもう酔いしれるしかなかった。
「やばい、そろそろ……」
「逝って、逝ってください武様……ん、このまま、私とピクシーにお情けを……マグネタイトをお恵み下さいませ」
「ん、出して、タケルの、タケルの美味しいの出して! ん、チュ、ベロ……ふぁ! い、私も、すごく、いいから、さ、ね、ね!」
 モゾモゾと腰をくねらせる二人の女性。ピクシーは武の陰茎に自ら全身を密着させているため直接性感を刺激して興奮できるが、ベスは胸の谷間で主の陰茎を擦るだけ。それでも彼女の腰はもどかしげにクネクネと動いてしまう。良く見れば真っ白なショーツが濡れて透き通り変色していた。まだ自慰すらしたことのない淫魔は奉仕だけで快楽を得、そしてまだ得ぬ快楽を求め自然と腰を動かしていた。
「くっ……」
「ふぁ! ん、いっぱいでたぁ……」
「ん、武様のがこんなに……熱い……」
 ピクシーの全身とベスの顔、そして胸を白濁色に染め上げる。ねっとりと熱く、そして匂いとも香りとも形容できる独特の臭気に女性二人がウットリと眼を細める。
「ああ武様。私もう……はしたない私をお許し下さい」
 起ち上がりながら急ぐように濡れたショーツを脱ぎ捨て、ピクシーがいることも忘れ武の上に跨るベス。
「武様……ん、ああ、こうしているだけでも、ん、あ、あぁあ!」
 射精して萎えた武の陰茎に自ら陰核と淫唇を擦りつけるように腰を振るベス。その刺激にムクムクと再びいきり起ち始めた武の陰茎。
「ちょっとベスぅ! ヒドイよぉ」
「ああごめんなさい……ん、でも、ふぁっ! が、我慢できませんの、もう、ん、ああ、武様、武様ぁ!」
 押しのけられたピクシーの抗議に謝罪しながらも、ベスの腰は止まらない。武の顔を抱きしめ胸の谷間に埋めながら、ベスは初めての自慰を武の陰茎で続けていた。
「ねー、私も混ぜてってばぁ! ベスばっかりズル……ちょ、ひゃっ!」
 止まらないベスに更なる抗議をしようとベスの顔近くまで飛び上がったピクシー。そんな彼女を突然ベスは鷲掴みにし、そして唐突にピクシーの全身を嘗め回し始めた。
「武様の、武様のマグネタイト……ああ、ん、チュパ、チュ、ベロ、おい、おいひい……ん、チュパ、チュ……」
「ひゃっ! ちょ、ベス、やめ、舐めとっちゃ、や、んぁ! でも、ちょ、き、きもちい、あっ、んぁあ!」
 すっかりピクシーの身体にこびり付いていた白濁液を舐めとっても、ベスの愛撫は続いていた。ピクシーもすっかり抗議する気力を失い、ベスの愛撫に酔いしれている。
「チュパ、ん、武様、んぁあ! こす、ここ、こすれるの、い、んあ、ん、チュ、ベロ……」
「や、ベス、そこ、ひゃっ! ん、ゆび、指で胸、いじ、いじっちゃ、ふぁあ! 舌、も、そこ、そこい、いい!」
 このまま昇天するかと思われた二人だったが、ベスの本能がそうさせるのか……ただ前後に腰を振り擦りつけるだけだった動きに変化が出始めた。すっかりガチガチに硬くなった陰茎に淫唇をなぞらせながら、腰を浮かせ、グラインドさせつつ淫唇と鈴口とを接吻させようと導き始めている。
「んぁああああ! は、入ってくる……武様の、武様のが……私、入れただけ、ですのに……」
 自慰の締めくくりは挿入。ズブリと勢いよく腰を落として、ベスは小刻みに身体を震わせ背を反らせていた。
「ああ、素敵……武様が、武様が……」
 気付けば、ベスの瞳からは止めどなく涙があふれ出ている。処女ではあったが処女膜の無かったベスに痛みはなかったが、涙が後から後から溢れ止まらない。
「ベス?」
 流石に心配した武が声を掛ける。ピクシーもベスに握られたまま心配そうに彼女を見つめていた。
「……やはり私は、武様のために生まれた悪魔……こうして武様をお迎えして、それを実感しております。この喜びが、涙となってあふれ出てしまうのです……」
 歓喜の涙を流しながら、ベスの腰が再び動き出す。
「ああ、この、この快楽こそ、ん、ふぁあ! ん、あっ、んあ、た、武様と、こうしていることが、んっ! 私の、喜び……あ、あぁああ! い、たける、さま……あ、んっ、あ、い、この、この悦びこそ、わた、わたしの、すべ、すべ、て、んぁああ!」
 地上のあらゆる喜びを独占したかのような、至福の笑みを浮かべながら、ベスは主に跨り腰を動かし続けた。
「ベス……大丈夫なの?」
「ああ、ごめんさない……あなたにも、ん、あぁ! 武様との、悦びを、んっ!」
 心配していたピクシーにようやく気付き、ベスは握っていたピクシーを自分の胸元へと導く。
「ちょ、ベス! な、なにするの?」
 そしてピクシーを胸の谷間に挟みながら武の顔を胸元へと近づける。
「武様、ん! ピクシーと、私に、ど、どう、か、んぁ! お、おなさけ、を、んん!」
 ベスの意図を理解した武は、胸に挟まれたピクシーを愛撫し始める。
「な、これ、んぁあ! た、タケルの舌、い、これ、いい、気持ちいいよ、タケル、タケルぅ!」
 全身をベスにパイズリされながら武の舌で愛撫されるピクシー。ピクシーを優しく愛撫しながらベスの腰に手を回し自ら腰を突き上げる武。自分の胸を横から押さえピクシーに柔らかい刺激を与えながら激しく腰を振るベス。奇妙な三位一体の快楽が三人を快楽の頂点へと導いていく。
「また……」
「い、タケルぅ、私も、タケルの、タケルの舌、舌でぇ! や、また、また、いっちゃ、いっちゃうよぉ!」
「武様、ああ、武様……んぁ! ふぁ、ん、武様、なか、中へ、中へ、まぐ、マグネタイトを、中に、奥にぃ! そ、武様の、注いで、そそいで、や、ん、ね、おく、に、き、きちゃう、い、あぁ、ん、い、いく、いく、いく、い、き、ちゃ、あ、あぁ、ふぁあああああ!」
 ギュッと武の頭を抱きしめ悶絶するベス。同様に武の腕にも力がこもり、二人に挟まれたピクシーもビクビクと身体を震わせていた。
「ああ……武様の精液が私の中へ……」
 二度目とは思えぬ量、ベスの中へと注ぐ武。その量はあまりにも多く、結合部から僅かに漏れ出すほど。
「いいなぁベス……私もタケルに中へ出して欲しいのになぁ」
 指をくわえてうらやましがるピクシー。大きさを考えれば無理な話だが、それでもピクシーは直接の結合とその結果に憧れてしまう。
「フフッ、ごめんなさいねピクシー。でもせめて……」
 コポッという湿った音と共にベスの腰が武から離れていく。淫唇からはまるでよだれのように白濁液が垂れ落ちていく。
「お裾分けをどうぞ、ピクシー」
「わぁい! いっただっきまぁす」
 胸の谷間から飛び出したピクシーは、自ら指で広げているベスの淫唇へと迫る。そしてあふれ出る精液を顔で受け止めながら喉を鳴らし飲み始めた。
「ん、ゴク、コク、ん、ぷはぁ、飲みきれなぁい……ん、コク、コク……」
 愛液と精液の混合液を浴びながら、恍惚の表情を浮かべるピクシー。そんな彼女の様子を見ながらふぅと一息つきうなだれる武。
「もっとよもっと、全然足りない」
 挑発するような言葉に、武は直ぐさま顔を上げた。するとそこには……イタズラっぽい笑みを浮かべた褐色の淫魔がいた。
「次はリリムの私を犯して、ご主人様。ね?」
 言うなり、クルリと背を向け前屈みになるリリム。ピコピコと愛らしい尻尾が武を誘っている。
「今度はこっちの処女を奪ってご主人様。淫魔のケツマンコも気持ち良いわよ?」
 淫乱だったが淑女らしい言葉を選んでいたベスとは異なり、リリム本来の姿に戻った彼女は卑猥な言葉を平然と用いて主を誘惑する。
「ねぇピクシー。そのまま私のマンコ舐め舐めしてくれる? まだご主人様の精液残ってるでしょ?」
「うん、いいよ」
 無邪気に答えたピクシーは、言われたとおりリリムの淫唇を舐め始める。
「ほらぁ、ご主人様ぁ……お願い、入れてぇ」
 プリプリと尻を振りながら誘惑するリリム。苦笑いに淫靡さを加えながら武は椅子から起ち上がり、リリムの腰に手を当てる。
「ったく、エロ悪魔め。さっきまで本当に処女だったのかよ」
「だってぇ、ご主人様のが気持ち良すぎて……あ、きたぁああああああ!」
 三度いきり起たせた武の陰茎が既にテラテラと濡れていたからか、それともリリムの菊門が既に濡れていたからか、すんなりと肉棒はリリムの中へと押し入っていく。自ら「ケツマンコ」と言うだけあり、中は性器としか言い様のない柔らかくも締め付けのキツイ奇妙な心地よさが。性器に入れただけで一度逝ったベスに代わり、今度は武が逝きそうになるが、それをどうにか堪えきる。
「ね、動いて、乱暴に、んぁ! ん、そ、そう、もっと、もっと、強く、ね、ご主人、様、ん、んぁああ! そ、ん、さ、サイコー! い、いい、ご主人様、い、きも、きも、ち、いい、いい、い、あぁあ!」
 後ろからリリムの胸を鷲掴みしながら獣のように腰を振る武。その激しさに口からも淫唇からもよだれを垂らし快楽を貪るリリム。
「凄いなぁ……どんどん出てくる。もう、マグネタイトが全部流れ出ちゃったじゃない……えへへ、こんなことしちゃおうっかなぁ」
「ひぁ! ちょ、ピクシー、それ、んぁあ!」
 ぷっくりと膨らんだ陰核に、ピクシーの小さな口が噛み付く。ハムハムと肉豆の歯ごたえを楽しみながら、だらしなくイヤラシイよだれを流し続ける穴に両腕を突っこみかき回し始めた。
「すご、い、二人して、こん、こんな、い、あ、んぁあ! き、きもち、よす、よすぎ、る、あ、ん、やぁああ!」
 思わぬ攻めに悶絶するリリム。喘ぎ歓喜し、リリムは机の上に手を突っぱね上半身を支えながら猛攻に耐え快楽を全身で受け止めていた。
 ピクシーの愛撫がリリムをよがらせるが、そのおかげで菊門がギュッと強く閉まる。それでも直腸は柔らかく肉棒を包み、心地好い圧迫を突く者と突かれる者に与えていく。あまりにも心地好い圧迫に武の手にも力がこもってしまい、柔らかい胸が激しく変形する。その力強い刺激がまたリリムをよがらせた。
「つよ、はげし、い、ん、んぁああああ! い、また、またいっ、ちゃ、う、ん、ご、ごしゅじんさま、い、いって、いって、いい、いい? も、もう、がまん、できな、ない、ん、あぁああ!」
「まってろ、俺もすぐ……くっ」
「あ、い、いっしょ、いっしょに、また、いっしょ、いっしょ、い、い、いっしょ、い、いい、きも、きもちよく、なっ、て、いっ、いっしょ、いっ、い、いっ、くぅうううぁああああ!!」
 力強く腰が密着し、胃の中へと注ぐように勢いよく腸内へ射精する武。お腹の中に暖かみを感じながら、リリムは息を荒げ上半身を机に預けた。
「二人ともすごぉい……むー、私おいてけぼりぃ」
 頬を膨らませながらも、ピクシーは何処か楽しげだった。
「ほら、今度はこっちで飲めよ」
 ゆっくりと引き抜かれる陰茎。まるで水門が開かれるかのように、菊門からは白濁の洪水があふれ出す。
「うん! すごぉい、いっぱい出したんだねぇ……ん、チュ、フフッ、おいしー! ん、ベロ、チュ……」
 あふれ出す精液ごと菊門を舐められ、余韻に浸っていたリリムの身体がまたピクピクと反応し始める。
「ね、ご主人様……」
 そんなリリムが振り返りながら、武を見つめる。そしてツンツンと自分の唇を突いて見せた。
「今度は……ね? 綺麗にしてあげるから」
 むろん綺麗にした直後、口内を汚して貰うつもりでいるリリム。それを悟りながらも、武は頭を掻きながらリリムの顔へと歩み寄った。
「いつまで続ける気だよ」
 既に三度放出している武は呆れながら尋ねた。だが男の性なのか、淫魔を前に陰茎はピクピクと少しずつ起き上がり始めている。
「んー、ご主人様が気絶するまで?」
「おいおい、また昏睡ってのは勘弁してくれよ」
「大丈夫よ。また看病してあげるから……ね? パパぁ」
「誰がパパだ」
 武から得たマグネタイトで誕生したリリムだが、当然血縁関係はない。リリムにとって……ベスにとって……武は血縁関係以上の、主である。その為に生まれたからそう思うのか……なんとなく、リリムはそれだけではないと確信している。
 処女だった淫魔が感じたのは絶頂の快楽。それと心温まる安らぎ。娼婦の自分と淑女の自分が主へ与える安らぎを、淫魔は主から与えられていた。
「今更だけど……」
「ん?」
 リリムの姿でベスのようにはにかみながら、愛らしい唇を開く。
「今後ともよろしく……武様、ご主人様……」
 武のために生まれた淫魔。その幸福を、彼女は噛みしめていた。

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